Alain Badiou「存在と出來事」1988
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數學は存在論である
數學は存在論の言說を述べることに奉仕することから、その法の例外的な嚴格さを引き出してゐる
私の述べてゐることが論證可能であればだが、數學的對象はないといふのが眞理である。數學は嚴密な意味では何も現前化させない。
數學はその歷史的生成の全體において、〈存在としての存在〉について言ひうることを言明してゐる
數學は存在論を實行する (effectuer)
われわれの目標は、數學とは〈存在としての存在〉に關する言說の歷史性であるといふ、メタ存在論のテーゼを立證することにある。そしてこの目標の先にある目標は、哲學ではない二つの言說 (および實踐) のありうる分節を思考する仕事を哲學に與へることである。その二つの言說 (および實踐9 とは、一方は存在の學である數學であり、もう一方は出來事 (これはまさしく「〈存在としての存在〉ではないもの」を指す) に關する介入的な諸學說である。
非整合的な多性 (multiplicité inconsistence)
〈一であること〉が操作の結果でしかないゆえに、遡及的に〈非-一〉として把握されるやうな純然たる現前化。
〈一と計算すること〉(compte-pour-un)
《一》は存在しない以上、どんな〈一の效果〉も操作 (すなはち〈一と計算すること〉) の結果である。
所屬・包含
所屬 (appattenance)$ \in→現前化
ある項 (ある要素) がある狀況によって現前化され、一と計算されてゐる場合、その項は狀況に屬することになる。
現前化 (présentation)
實際に展開されたものとしての〈多なる存在〉
狀況 (situation)
現前化した一切の整合的な多性、つまりなんらかの多、そして〈一と計算すること〉の體制、あるいは構造 (structure)
構造づけられた現前が狀況
包含 (inclusion)$ \subset→再現前化
ある項がある狀況の下位の多、部分である場合、その項は狀況に包含されてゐると言はれるだらう。そのとき、その項は狀況の狀態によって一と計算されてゐる。
再現前化 (表象。代理。représentation)
ある項が狀況の狀態によって一と計算されてゐる場合、その項は (狀況のなかで) 表象 (再現前化) されてゐると言はれる。
狀況の狀態 (état de la situation)
狀況の構造のはうがそれによって〈一と計算〉されることになるところのもの
〈計算の計算〉あるいはメタ構造
正常性 (normalité)
項は、それが狀況のなかに現前化されてゐる (所屬 ($ \in) してゐる) と同時に狀況の狀態によって再現前化されてもゐる (包含 ($ \subset) されてもゐる) とき、正常である。$ \alpha\in\beta\land\alpha\subset\beta
構造 (〈一と計算すること〉) とメタ構造 (計算を計算すること) によって計算されてゐる
自然的 (naturel)
ある狀況が現前させるすべての項が正常であり、またさうした項によって現前化されたすべての項も正常であり、以下同樣に續く場合、この狀況は自然的である。
自然な多の存在論的圖式は順序數の槪念によって構成される。 過剩體 (excroissance)
過剩體は狀況に所屬 ($ \in) することなく (現前化せずに)、狀況に包含 ($ \subset) されてゐる (再現前化してゐる)。$ \alpha\notin\beta\land\alpha\subset\beta
特異的 (singulier)
狀況に所屬 ($ \in) する (現前化してゐる) が、狀況に包含 ($ \subset) されてゐない (再現前化してゐない)$ \alpha\in\beta\land\alpha\cancel\subset\beta
特異性は歷史存在の本質屬性であり、特に出來事の立地 (site événementiel) の本質屬性である。
基礎の公理 (FA) : この公理は〈自己-所屬〉の禁止を含意してをり、かくして出來事について存在論は知るには及ばないと措定する 技術的に言へば、$ \beta\in\alphaである場合、一切の$ \gamma\in\beta($ \betaの要素) について$ \neg(\gamma\in\alpha)である ($ \gammaは$ \alphaの要素ではない) ならば、$ \betaは空$ \varnothingの緣 (bord du vide) に存在する。また$ \betaは$ \alphaを基礎づけるとも言へる。
あらゆる〈一と計算すること〉(存在論的狀況の場合を除く) の〈非-一〉である空 (vide)$ \varnothingは、〈みずからを現前化させるもの〉が計算からの差し引き (soustraction (拔け去り。免算)) といふ形で現前化のなかを徘徊するといふこと、このことをあらはにする位置づけ不可能な點である。
存在的-存在論的差異 (différence ontico-ontologique) この差異は、空が ($ \varnothingによって) 標記されるのは存在論的狀況においてのみであるといふ事に結びついてゐる。存在者の狀況では、空は締め出されてしまふ。その結果、多の存在論的圖式が空によって基礎づけられうる (これが順序數の場合である) のに對して、存在者の歷史狀況のはうは、つねに空でない出來事の立地によって基礎づけられてゐる。 存在者の歷史狀況 (situation historique) : 詩的な近接
出來事の立地 (特異性) が少なくとも屬してゐる狀況
介入の存在であって、介入の行爲 (act。現動態) ではない
この公理は〈多なる存在〉(整合性) を要素の個別性を超越するものとして思考する。〈多なる形式〉は代替後も整合性を保持するから、諸要素は代替可能である。
この公理は、存在が言語に先行するといふことを示唆する。言語によって一個の多を「分出」できるのは、〈多なる存在〉がすでに與へられてゐるからである。
この公理は〈自然な存在〉が無限$ (+)を受け入れると措定する。
自然な無限の存在論的圖式は極限順序數の槪念から構成されてゐる。
準完全狀況 (situation quasi compléte) にある集合$ S
以下の條件を滿たす
濃度が可算無限 (infini dénombrable)$ |S|=\aleph_0
推移的 (transitivité) である
$ \forall \alpha,\beta\in S(\beta\in\alpha\supset\beta\subset\alpha)
正常性の存在論的圖式
條件集合 (ensemble des conditions)$ \copyright
要素を條件と言ふ
條件は探索の存在論的圖式
探索 (enquête)
狀況のもろもろの項と出來事の名$ e_\chi(これは介入によって流通させられたものである) とのあいだの接續あるいは非接續 (これは忠實さの手續きの枠組みにおいて觀察される) の有限な連なり
$ y_1は肯定的に探索された$ y_1(+)
$ y_1は否定的に探索された$ y_1(-)
原始的な探索
肯定的接續$ y_1\square e_\chi
否定的接續$ \neg(y_2\square e_\chi)
忠實さ (fidélité)$ \alpha\square e_\chi
介入が流通させた出來事の名に結びついて實存する多を、狀況のなかで識別する手續き
條件$ \piの名 (nom)$ \mu
價値
條件と名の組$ \lang\mu,\pi\rangの集合
名の指示對象的な價値 (valeur référentielle d'un nom。名の〈指示對象-♀〉(♀-référent d'un nom))$ {\rm P\kern{-0.3em}x}_♀(\mu)
準完全狀況$ Sの générique な部分$ ♀に對して、百科全書的規定が循環しない名の對$ \lang\mu_1,\pi_1\rangの集合であって、條件$ \pi_1が$ ♀に屬するものを言ふ
$ \copyright\in Sは以下の條件を滿たす
$ \varnothing\in\copyright。空虛な條件
$ \pi_1\subset\pi_2「$ \pi_2が$ \pi_1を支配する」と云ふ關係が實存する
$ \pi_1\subset\pi_2かつ$ \pi_2\subset\pi_3ならば$ \pi_1\subset\pi_3
$ \forall\pi_1\in\copyright\exist\pi_2,\pi_3\in\copyright((\pi_1\subset\pi_2\land\pi_1\subset\pi_3)\land\neg\exist\pi_4\in\copyright(\pi_2\subset\pi_4\land\pi_3\subset\pi_4))
$ \pi_2,\pi_3は兩立不可能である (相互に整合的でない)$ \neg\exist\pi_4\in\copyright(\pi_2\subset\pi_4\land\pi_3\subset\pi_4)
支配集合 (domination)$ D
$ D\subset\copyright
定義可能部分 (partie définissable)$ D(\alpha)
$ D(\alpha)\subset 2^\alpha
超過 (excés)
(狀況內) 存在と出來事 (〈超-一〉) との差異
超過點の定理 (théorème du point d'excès)
$ \forall\alpha\exist x(x\in 2^\alpha\land x\notin\alpha)
$ \forall\alpha\exist x(x\subset\alpha\land x\notin\alpha)
系$ \alpha\ne 2^\alpha
つねに少なくとも一個の過剩體が實存するといふことを示唆してゐる。つまり狀況の狀態は狀況とは合致しえない
Cohen-Easton の定理 (théorème de Cohen-Easton)
冪集合の濃度を基數列のほとんどどんな位置にでも動かせる 超過の完全なる彷徨を立證する
超過を考へる、思考における方向附け (orientations dans la pensée)
3 種の方向附け
構成主義的 (constructiviste) 方向附け
構成主義的な思考の方向附けは言語の法廷の管轄下に身を置く。
知 (savoir)
知の操作は、識別 (この多はしかじかの特性をもつといふこと) と分類 (これらの多は同じ特性をもつといふこと) である。
百科全書 (encyclopédie)
超越的 (transcendante) 方向附け
最高存在者といふ觀念、超越的權力といふ觀念
階層構造において超過の逃走に「たがをはめる」
かうした思考の存在論的圖式は巨大基數の學說である。 générique な方向附け
générique なもの (le générique)
générique 集合$ ♀
眞理の存在論的圖式
準完全狀況の générique 擴張 (extension générique s'une situation quasi compléte)$ S(♀)
$ \neg(♀\in S)。$ ♀\in S(♀)
$ S(♀)もまた準完全狀況である
眞理と主體の免算 (soustraction) 的把握
眞理 (vérité)
完了したと假定された (つまりは無限な) générique な忠實さの手續きによって肯定的に探索されたことになるすべての項を取り集めたもの
未來における、狀況の有限な部分
「僞」とは、générique な手續きの續行を妨げるもの
主體 (sujet)
générique な手續きの有限な局所的布置 (cofiguration)
局所的に明らかにする者
識別不可能なものを實效あらしめ、決定を強制し、特異なものを救ふ
générique な思考 (pensée générique) の方向附けは超過の彷徨を引き受け、名づけえぬ諸部分 ($ \subset) あるいは識別不可能な諸部分の存在を認める。
超過の彷徨
識別不可能なもの (indiscernable)
狀況のある部分 ($ \subset) が言語のいかなる言表によっても分出されないあるいは識別されない場合、この狀況の部分は識別不可能である。
識別不可能性の存在論的圖式は〈非-構成可能性〉である。
不可識別者同一の原理
générique な手續き (la procédure)
愛・藝術・科學・政治
出來事 (événement)
ある出來事——所與の出來事的な立地から生じる——は、一方では立地の諸要素から、他方ではそれ自身 (出來事) から構成された多である。
みずからがそれであるところの多の要素
〈超-一〉
介入 (intervention)
ある多が出來事として認識される手續きであり、出來事の立地である狀況にその出來事が屬する ($ \in) といふことを決定する手續きのこと。
介入能力はこの最初の出來事 (手本) への忠實さによって規定される。 介入の本領は、この決定不可能なものの地點において決定することにある。
強制 (forçage) 關係の檢證 (適合性の檢證) は、強制する項は忠實さの générique な手續きによって遭遇され、探索されたものであるといふことを前提とする。つまりその檢證は偶然を免れない。
適合性 (véridicité)←→閒違ひ
「狀況のある項が百科全書のある規定項のもとに收まる」あるいは「狀況のある部分が百科全書のなかでなんらかの仕方で分類される」
決定不可能なもの (indecidable)
出來事の立地が存する狀況に出來事が屬してゐる ($ \in) かについては決定不可能だ
non-philosophie
哲學の絕望と第一哲學の没落
哲學の根源としての憤りとその淨化作用
非哲學的コード
非哲學とはどのような科學か?
『僞典最後の福音書』のために
不可能とされる海洋生態學の基礎構築
接續詞「そして...そして...その他」および汎用用語について
ついに、哲學科學の汎用的基礎が確立される
循環器系のスタイルを模した傳記的試み
三つのジャーナリズム樣式 (超越的、超越論的、汎用的)
親子相克の系譜學 (非哲學と精神分析)
メシア的原理 (個人、人閒、主體)
衰退、生存、そして非哲學の祕密活動
「最終的解決」と惡の消費
レヴィナス的效果
思考の三つの秩序
抵抗か感情性か――世界がどのように與へられるか
グノーシス的不變項と非哲學へのその寄與
訓練、鋭利さ、嚴格さ――それらの非哲學的轉化